営業職として日々街中を駆け巡る私たちには、多くの予期せぬ出来事が待ち受けています。その中でも、天気の急変は特に大きな影響を与えます。今回は、外回りの営業員として経験したある雨の日の一時雨宿り体験記をお届けします。

その日はいつも通り、朝のミーティングを終え、スケジュール帳を確認し、得意先のリストを眺めながら、次の訪問先へ向かう準備を整えていました。天気予報では「午後から雨」と伝えていましたが、午前中の青空を見上げる限り、まさか自分の予定に影響を及ぼすほどだとは思いませんでした。

午前中の商談を無事に終え、次なるクライアントへ向かうために駅へと足を急いでいた時のことです。突如、空が暗転し、湿った空気が体にまとわりつくのを感じました。慌ててスマートフォンで再度天気を確認すると、確かに今後の一時間で大雨が降る可能性があるとのこと。そんな時こそ、営業マンとしての判断力が問われます。

少しの雨ならば予定通り進めようと考えていましたが、それは甘かった。突然、大粒の雨が降り始め、瞬く間に道路は雨水で溢れだしました。急いで近くの商店の軒先に身を隠すも、強い横殴りの雨が吹き付けます。慌ててバッグから折りたたみ傘を取り出し、近くのカフェへと避難することにしました。

カフェの中は、同じ思いを抱いた人々で賑わっていました。席を確保するのがやっとという状況ではありましたが、ちょうど目の前に空席が見つかり、ほっと一息つくことができました。こういう時、どれほどカフェという存在がありがたいかを改めて実感します。コーヒーを注文し、スマートフォンで次の訪問先への連絡と新たな予定の調整を行いました。

雨に打たれたことで、少し冷えた体を温めるため、熱いコーヒーが染み渡ります。窓の外を見渡すと、駅前の通りを行き交う人々や、行き場をなくした車の喧騒が、まるで別世界のように感じられました。皆、思い思いの方法でこの突然の大雨に立ち向かっているのです。

雨宿りという非日常の時間は、普段忘れがちなことを考えさせてくれます。激しい天気は我々の予定を狂わせますが、一方で、誰もが同じ条件の下で行動することを余儀なくされる瞬間です。その瞬間に、新たなビジネスのアイデアが浮かんだり、普段とは違う視点で物事を見るきっかけを与えてくれることもあります。

約一時間ほどで雨は弱まり、徐々に明るさが戻りつつある空を仰ぎ、私は再び営業に戻ることにしました。カフェを後にする際、ちょっとした頂き物として、小さな雨の雫をまとった葉を靴下に見つけ、その鮮やかな緑にどこか心が救われる思いがしました。

今回の雨宿りは、確かに私の営業活動を一時的に停滞させましたが、一方で思わぬリフレッシュと新たなモチベーションを与えてくれる貴重な時間でもありました。外回りの営業は天候に左右されることは避けられないものですが、その中でどのように振る舞うかは、一人一人の工夫次第です。

雨が上がり、街はいつもの様子を取り戻していました。再び歩き出した私は、さっきの雨宿りの時間があったからこそ、新しい気持ちで次のクライアントに会えるのだという心の晴れやかさを感じながら、次の目的地へと向かったのでした。天候の急変は確かに困惑を招きますが、それを乗り越えるたびに成長する自分を感じることができるのも、また営業の醍醐味と言えるのではないでしょうか。